ソフトウェア開発プラットフォームとしてGitLabとGitHubのどちらを選ぶべきか迷っている方は多いのではないでしょうか。どちらも優れた製品ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。本記事では、開発チームの規模や目的に応じた選び方のポイントをご紹介しながら、GitLabとGitHubそれぞれの特徴や主要機能の違いを解説します。ツール選定でお悩みの方は、ぜひご参考になさってください。どちらを使うべき?GitLabとGitHubの選び方のポイントGitLabとGitHubのどちらを選ぶべきでしょうか?判断基準となる選び方のポイントをまとめました。1. チームの規模と開発スタイル企業レベルのプロジェクトや大規模チームには、GitLabが適しています。グループによる組織管理機能やプロジェクト管理機能を含むチーム開発に必要な機能がオールインワンで揃っており、大きな組織でも開発プロセスの標準化を実現できます。一方で、個人開発や小規模チームにはGitHubが適しています。充実したドキュメントや直感的でシンプルなUIにより、学習コストを抑えながら効率的な開発が可能です。2. セキュリティとコンプライアンス高いセキュリティ要件がある組織では、GitLabが適しています。高度なセキュリティスキャン機能や脆弱性レポート機能により、開発ライフサイクルにセキュリティ対策を組み込むことができます。コンプライアンス要件への対応が必要な場合も、GitLabが適しています。SBOM出力や監査管理機能、コンプライアンス機能により、規制要件への対応が容易になります。また、Self-Managed版をプライベート環境で運用することで、データの完全な統制も可能です。3. オールインワンか、DIYかツールの統合や管理コスト削減を重視する場合は、オールインワンのDevSecOpsプラットフォームであるGitLabが適しています。開発に必要な機能が全て揃っており、単一プラットフォームで開発ライフサイクルを完結できるため、ツール切り替えが不要となりツール管理のコストを削減できます。一方で、ツール選択の自由度の高さを重視する場合には、GitHubが適しています。豊富なサードパーティ連携により、ニーズや開発者の好みに合わせてツールをDIYできる拡張性と柔軟性があります。【重要】AI活用時の選定ポイントコード生成・補完を重視する場合、GitLab DuoとGitHub Copilotはコード生成において同程度の性能のため、どちらも有力な選択肢となります。GitLab Duoには、近年人気が非常に高まっているAnthropic社のClaudeが使われており、自然な言語処理や高品質なコード生成に定評があります。GitHub CopilotはChatGPTを開発するOpenAIとの協力によって開発され、コード生成のパイオニアとして多くの開発者に愛用されています。高度なセキュリティ・コンプライアンス要件がある場合は、GitLab Duo Self-Hostedが有効です。GitLab Duoをセルフホストすることでプライベート環境でAI機能を利用できるため、機密性の高いプロジェクトでも情報漏洩や学習に使われるリスクを気にすることなく、安心してAIを活用できます。GitLab Duo Self-Hosted:セキュリティ境界内で実現するエンタープライズ向けAIそもそもGitとは?Gitによるバージョン管理GitとはGitは、現在のソフトウェア開発においてデファクトスタンダードとなっている分散型バージョン管理システム(Distributed Version Control System)です。2005年にLinuxの開発者であるリーナス・トーバルズによって開発されて以来、世界中の開発者に愛用されています。コミット機能によりファイルの変更履歴を記録し、誰がいつどのような変更を加えたかを詳細に追跡することができます。ブランチ機能により並行開発が可能で、マージ機能によって変更を取り込むことができます。個人開発からチーム開発まで幅広く活用されており、現在のソフトウェア開発の基礎となる不可欠なシステムです。GitとGitHub・GitLabの関係性GitHubとGitLabは、どちらもGitを基盤としたGitホスティングサービスです。Gitがあくまで開発者のローカル環境上で動作するツールであるのに対し、GitHubやGitLabはGitリポジトリ(ソースコード)をリモート環境上でホストし、チーム開発を効率化するためのプラットフォームです。複数の開発者が同じプロジェクトで協力し、コードの共有やレビューを行うために必要な機能を提供しています。それに加えて、プロジェクト管理やCI/CDパイプラインなど、開発プロセスを支援する機能をそれぞれ異なるアプローチで提供しています。GitHubとGitLab、それぞれの特徴と機能を詳しく解説します。GitHubの特徴と主要機能GitHubの特徴GitHubは世界最大の開発者コミュニティを持つプラットフォームとして知られており、2025年時点で1億人以上の開発者が利用しています。2008年にサービスを開始して以来、オープンソースプロジェクトの中心地として発展し、開発者同士のコミュニケーションと知識共有を重視した設計となっています。GitHubの大きな特徴の一つは、初心者でも使いやすい直感的なユーザーインターフェースです。豊富なドキュメントと充実したコミュニティサポートにより、プログラミングを学び始めたばかりの開発者でも容易に参加できる環境を提供しています。GitHubの主要機能GitHubの代表的な機能を紹介します。Gitホスティングサービスとしてのシンプルで使いやすい機能が提供されています。機能説明プルリクエストGitHubの最も重要な機能の一つで、開発者はプルリクエストを通じてコードの変更提案を行います。コメント機能やレビュー機能による議論を通じてコードの品質向上を図ることができます。GitHub ActionsCI/CDパイプラインを構築するための自動化プラットフォームです。コードのテスト、ビルド、デプロイメントなどのワークフローを自動化することで、開発効率を大幅に向上させます。開発者の好みのツールと組み合わせることにより、複雑な自動化処理の実現も可能です。GitHub Pages静的サイトの無料ホスティングサービスです。プロジェクトのドキュメントサイトやポートフォリオサイトを簡単に公開できるため、多くの開発者が利用しています。GitHub CopilotAIを活用したコード補完・生成機能です。OpenAIとの協力により開発されたこの機能は、コメントや関数名から適切なコードを自動生成し、開発生産性を大幅に向上します。GitHubは、外部ツールとの連携を前提とした設計により、開発者が好みのツールを組み合わせて使用できる柔軟性を提供します。GitLabの特徴と主要機能GitLabの特徴GitLabは無料で使い始められるオープンコアモデルを採用したプラットフォームで、個人開発者から大企業まで幅広く利用されています。CE版はMITライセンスの完全なオープンソースで、有償プランのあるEE版もソースコードが全て公開されており、無料で使い始められます。オールインワンがGitLabプラットフォームの最大の特徴です。一般的な開発環境では、バージョン管理、CI/CD、プロジェクト管理、セキュリティスキャンなどをそれぞれ別のツールで管理する必要がありますが、GitLabではこれらすべてを単一のプラットフォームで実現できます。これにより、ツール間の連携設定や管理の複雑さを大幅に削減できます。チームや組織で使いやすい設計となっており、小規模チームから大規模開発チームまで、組織の成長に合わせてスケールできます。グループ機能による組織階層の管理、詳細な権限設定、監査機能など、チーム開発に必要な機能が標準で提供されています。選べる導入方法も魅力の一つです。SaaS版(https://gitlab.com)で手軽に始められるだけでなく、セキュリティ要件に応じてオンプレミス環境やクラウド環境で運用できるSelf-Managed版も選択できます。どちらも同じ料金設定で無料で使い始められます。GitLabの主要機能GitLabは、開発ライフサイクル全体をカバーする包括的な機能群を提供しています。これらの機能は相互に連携し開発プロセス全体を一元管理できる設計となっており、複数のツールを組み合わせる必要がなく、運用コストの削減と効率化を実現できます。機能説明階層構造での組織管理グループ・サブグループ・プロジェクト機能により多層的な階層構造を作ることができ、組織の構成を反映した組織管理やプロジェクト管理が可能です。大規模な組織での複雑な権限設定への対応も容易です。プロジェクト管理イシュー、ラベル、エピック、マイルストーン、イテレーション、イシューボードなどの機能により、プロジェクトの進捗を可視化し、アジャイル開発・ウォーターフォール開発など開発手法を問わず効率的なプロジェクト管理が可能です。マージリクエストGitHubのプルリクエストに相当する機能で、コードレビューとマージプロセスを管理します。GitLabでは、承認ルールの設定、レビュー担当者の割り当て、マージ前のセキュリティスキャン設定など、Enterprise環境で求められる厳格なコードレビュープロセスの実現が可能です。GitLab CI/CDGitLabの中核機能の一つです。コードのビルド、テスト、デプロイを自動化できます。複数の環境(テスト、ステージング、本番)へのデプロイ管理やロールバックなど、DevOps実現に必要な機能を標準で提供します。セキュリティスキャンSAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)、DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)、依存関係スキャン、コンテナスキャン、シークレット検出など、多くのセキュリティスキャンを自動化できます。これらの機能により、開発プロセスの早期段階でセキュリティリスクを発見し、対処することが可能です(セキュリティのシフトレフト)。GitLab DuoAIを活用した開発支援機能です。GitLab Duoチャット、コード補完、テストコード生成、セキュリティ脆弱性の自動修正提案など、開発者の生産性向上を支援します。GitLabプラットフォーム内で一貫したAI支援を提供します。これらすべての機能が単一のプラットフォーム内で統合されているため、データの一貫性が保たれ、ツール間の連携設定や管理の複雑さを大幅に削減できるのがGitLabの最大の強みです。GitLabの基本機能や特徴については、「2024年最新版「GitLabとは?」主な機能と使い方を初心者向けに徹底解説」で詳しく解説しています。機能の全体像をつかみたい方は、ぜひあわせてご覧ください。GitLabとGitHubの違いとは?利用目的目的GitLabGitHub利用規模企業プロジェクトやプライベート環境オープンソース開発や小規模チーム開発ツールの組み合わせオールインワンの利便性ニーズに合わせてDIY運営会社GitLab Inc.独立企業として運営、2021年にNASDAQに上場Microsoft Corporation2018年にMicrosoftが75億ドルで買収、買収前は独立企業として運営されていたGitLabは、企業レベルのプロジェクトでの利用に適しています。大規模開発や厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件が求められる企業環境において、GitLabの組織管理機能やビルトインのセキュリティ機能が有効です。開発に必要な機能がオールインワンで揃っている利便性が、開発プロセス全体を効率化やツール管理の複雑さの解消に寄与します。一方、GitHubは、オープンソース開発や小規模チームでの利用に適しており、ニーズに合わせてツールをDIYできる拡張性と柔軟性を提供しています。シンプルな機能をベースに、開発者や組織の好みに応じて外部ツールと組み合わせることで、カスタマイズされた開発環境を構築できます。機能(AI・セキュリティ・CI/CD・開発生産性)主要機能について、その違いを解説します。機能GitLabGitHubAIGitLab Duoは、GitLabプラットフォーム内で一貫したAI支援を提供します。コード補完だけでなく、AIによるコードレビュー、セキュリティ脆弱性の修正提案など開発プロセス全体にAIを活用できる点が特徴です。さらに、Duoのセルフホスティングも可能であり、高度なセキュリティ・コンプライアンス要件を満たしつつ生成AIを活用することができます。GitHub Copilotは、OpenAIとの協力により開発された先進的なAI支援機能で、コード補完、関数生成、コメント作成などの機能を提供します。多くの開発者に使用されており、AI支援開発の先駆者的存在です。セキュリティGitLabが大きくリードしています。GitLabでは、SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)、DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)、依存関係スキャン、コンテナスキャン、シークレット検出などの包括的なセキュリティ機能を標準で提供しています。GitHubでもGitHub Advanced Securityとして類似の機能を提供していますが、これは有料プランでのみ利用可能で、外部ツールとの連携が必要な場合が多くなります。CI/CDGitLabは内蔵のCI/CDパイプラインで完結する設計を採用しています。パイプライン設定ファイル一つで、ビルド、テスト、デプロイメントの全工程を定義でき、複数の環境への段階的デプロイメント、承認プロセス、ロールバック機能などが標準で提供されます。特にAuto DevOps機能により、設定なしでも基本的なCI/CDパイプラインを自動構築できます。一方、GitHubはGitHub Actionsを提供しており、豊富なマーケットプレイスのアクションを活用できる設計となっています。柔軟なワークフローを構築できる反面、複雑な設定が必要になる場合があります。開発生産性GitLabは標準でバリューストリーム分析やDORAメトリクスなどの開発生産性を可視化する機能を備えており、統合プラットフォームによるシングルデータストアならではのトレーサビリティを実現しています。開発チームのパフォーマンスを客観的に測定し、継続的な改善を支援します。一方、GitHubは開発者の自由度を重視し、豊富なサードパーティツールとの連携により、開発者が好みの環境を構築できます。 GitLabの詳細な機能については、DL資料「GitLab製品紹介 + 導入支援サービス」をぜひご覧ください。4項目の入力ですぐにダウンロードいただけます。導入方法(SaaS / オンプレミス)導入方法GitLabGitHub特徴GitLabはオンプレミスでのニーズが高いGitHubはSaaSが主に利用されるSaaS環境https://gitlab.comhttps://github.comオンプレミス環境無料版GitLab CE(Community Edition)と有料版GitLab EE(Enterprise Edition)有料版GitHub Enterprise Serverのみ導入方法において、両プラットフォームは異なるアプローチを採用しています。GitLabはSaaSとSelf-Managedの両方を同等に重視した設計となっています。https://gitlab.comでのSaaS利用はもちろん、Self-Managed版では企業の厳格なセキュリティ要件や規制要件に対応できます。特にデータの外部保存が制限されている組織にとって、プライベートな環境に構築できるSelf-Managed版は有力なオプションとなります。GitHubはSaaSでのサービス提供に重点を置いており、クラウドファーストの設計となっています。https://github.comでホストされるパブリックリポジトリは無制限で利用でき、プライベートリポジトリも無料プランで利用可能です。企業向けにはGitHub Enterprise CloudとGitHub Enterprise Serverを提供しており、後者ではオンプレミス環境での運用が可能です。GitHub(SaaS)はソフトウェア開発の中心地である反面、近年ではシークレット漏洩やソースコード流出などセキュリティリスクが表面化しており企業利用には注意が必要です。料金プランGitLabは、SaaS版(https://gitlab.com)とSelf-Managed版の両方で同じ料金体系を採用しています。料金GitLabGitHub無料プラン・最大5ユーザーまで利用可能・月間400分のCI/CDパイプライン実行時間・基本的なプロジェクト管理機能・パブリックリポジトリの無制限利用・プライベートリポジトリは制限あり・GitHub Actionsの基本的なCI/CD機能(パブリックリポジトリでは無制限、プライベートリポジトリでは月間実行時間の制限あり)有料プランPremium:月額$29/ユーザー・月間10,000分のCI/CDパイプライン実行時間・高度なプロジェクト管理機能・GitLab Duo Core(AI機能)が追加購入なしで利用可能Ultimate:価格はお問い合わせください・月間50,000分のCI/CDパイプライン実行時間・包括的なセキュリティスキャン機能(SAST、DAST、コンテナスキャンなど)・コンプライアンス機能、監査ログEnterprise Cloud:月額$21/ユーザー + GitHub Copilot Business:月額$19/ユーザー・GitLab Premium(Duo Core含む)に相当Enterprise Server:オンプレミス版、価格は要問い合わせGitLabの各種料金プランを知りたい方は、「料金プラン」のページをご覧ください。Ultimateの料金につきましては、フォームよりお問い合わせください。GitHubからGitLabへの移行セキュリティ要件・コンプライアンス要件の厳格化や開発プロセスの標準化ニーズの高まりによって、GitLabを採用する企業は年々増えており人気が高まっています。ガートナー社によるレポートでも2023年・2024年の2年連続で「リーダー」として選出されています。すでにGitHubをご利用中でGitLabをお試しになる際は、GitLab標準機能を利用してGitHubからGitLabへのプロジェクト移行が可能です。GitHubからGitLabへの移行をご検討の際は、 問い合わせフォーム もしくは DevOps・DevSecOps無料相談会 よりお気軽にお問い合わせください。経験豊富なエンジニアが移行計画の策定から実行まで全面的にサポートいたします。まとめGitLabとGitHubは、どちらも優れた開発プラットフォームですが、チームの規模や要件によって適切な選択が変わります。GitLabは企業レベルの大規模開発や厳格なセキュリティ要件がある組織に最適です。オールインワンの統合プラットフォームとして、開発に必要な機能が全て揃っており、ツール管理コストを削減できます。Self-Managed版による完全プライベート環境での運用や、GitLab Duoによる包括的なAI活用も可能です。GitHubは個人開発、小規模チーム、オープンソース開発に最適です。直感的なUIと豊富なドキュメントで学習コストを抑えつつ、外部ツールとの連携により開発者の好みに合わせた柔軟な環境を構築できます。GitLabとGitHubの比較表